元編集者として800件以上を取材。質問力で実店舗・中小企業様を選ばれる存在に導く、Web販促コンサルタントの大鹿です。
「ブランドを作る」「ブランディングで事業をイメージアップさせる」とはよくいわれることですが、このブランドという言葉、抽象的で分かりづらい…と思ったことはありませんか?
結論からいうと、ブランドとは、「お客さんの頭のなかにあるイメージ」のこと。
実は昨日、地元・高松の商工会議所で開かれた中川政七商店さん(工芸品の総合小売業)の講演を聞き、僕も「そういうことだったのかー!」と合点がいったことでした。
自分の頭を再整理するためにもブランドとブランディングの定義について書いていくので、ぜひ参考にしていただけるとうれしいです。最後までお楽しみに!
ブランド=「お客さんの頭のなかにあるイメージ」
ブランドと聞くと、何を思い浮かべるでしょうか? エルメスやGUCCI、ポルシェといったラグジュアリーブランドのことでしょうか?
まさに、これらはブランドです。社名を聞いて「ああ、あれね」「一生に一度は」「洗練されていて憧れる」といったイメージが、パッと頭に浮かぶもの。
ですが、何もエルメスやGUCCIのような高級路線に限らず、吉野家やユニクロだってブランドです。吉野家と聞くと『やすい・うまい・はやい』が、ユニクロだと『値ごろだけど高品質な日常使いの服』といったイメージが、パッと頭に浮かびますよね。
この「お客さんの頭のなかにあるイメージ」がブランドであり、それを「お客さんの頭のなか」に形作る作業がブランディングです。
ブランド=『イメージ』なので、特定の商品だけをブランドと呼ぶわけではなく。ポルシェだって車種がいくつもありますが、「911カレラ」だけをポルシェとは言わないですよね? 全車種がポルシェですし、ポルシェ独特の流線型のフォルムもポルシェです。
- 商品も
- CMも
- ホームページもSNSも
- チラシも
- お店も
- スタッフの立ち居振る舞いも
すべてがブランドを形作るものだし、それらに1つの方向性を持たせるのがブランディング、ということです。牛丼の吉野家を思い浮かべていただくと、『やすい・うまい・はやい』+親しみやすいイメージが、トータルでできているのがわかると思います。
ここまでが、ブランドとブランディングの基礎であり、本質的な部分。
本当の付加価値とは、取ってつけたようなものじゃない!
あえて例としてラグジュアリーブランドを挙げたのですが、それにも理由があります。
というのも、「高く売る」ために商品に「付加価値」をつけよう。だからデザインにこだわろう。それが付加価値であり、ブランドを作ることだ。
といった、『取ってつけた』ような考え方が横行しているから。
でも、高いお金を払ってデザイナーにかっこいい・こだわった商品デザインを作ってもらっても、それが「売れる」理由にはなりません。
「お客さんの頭のなか」に『これ』というイメージ、値段じゃなくても『選ばれる理由』が形作られてはじめて、お客さんが「高くても欲しいな」と感じてくれるわけです。
だからこそイメージが形作られるよう、目を引くデザインを通して、ホームページを通して、SNSを通して、チラシを通して、メディア露出を通して、接客を通して…お客さんと接点を作っていく。一朝一夕でできることではないですし、デザイン=ブランドにはなり得ないということです。
では、どんなイメージを伝えていくかというと、
- 物語(ブランドストーリー、創業者のストーリー)
- 会社のビジョン、信念
- 地域への愛
といったものだと思います。
たとえば僕の好きなアップル製品、創業当初は『テクノロジーとアートの交差点に立つ』がビジョンだったといいます。アップルのMacやiPhoneのプロダクトとしての美しさは、角のアール(丸みの角度)や表からは見えない端子の部分まで、こだわり抜かれているのは有名な話。
(創業者の故・スティーブ・ジョブズがMacの四隅の丸みを紙やすりで削ってデザイナーに指示した、というのも強烈なエピソードです)
それでも、ここまで偏執狂的な『アート性』へのこだわりがあったからこそ、毎年毎年、新製品が出るたびにファンを熱狂させているんでしょうね。
この「角を丸くする」は付加価値でしょうか? 機能やデザインとしての価値を超えた信念・想い・ビジョンが見え隠れするものですよね。単にMacと同じアールの丸みを他のメーカーが真似したところで、誰も気にしないはずです。
お客さんの頭のなかで醸成される、あなたの、そしてあなたの会社・お店のイメージはなんでしょうか? 譲れない信念はなんでしょうか? これからブランドを作っていくなら、まずその掘り下げが必要ですね。
中小企業にとっては「やらないことを決める」ことも大事
現代のブランディングでは、インターネットやリアルな伝達手段を駆使して、お客さんの頭のなかで作られる「イメージ」を届けていくことが重要です。
しかしながら…ホームページも、Twitterも、Instagramも、YouTubeも、チラシもダイレクトメールも、となにもかもに手を出すのは、現実問題、中小企業・零細企業には難しい。
お客さんとの接点は多ければ多いにこしたことはないですが、中小零細にとっては、「やること」と「やらないこと」をキッパリ線引きしたいものです。人員や予算、かけられる時間に応じて。商売をしている地域で、明らかにホームページに力を入れるよりSNSに注力した方が効果的、といったケースはあるでしょう。
あれこれ手を出すけど何もかもが中途半端…というところは、厳しいようですがそれを使っている意図もなければ芯にあるビジョンもない。手を出し続けるより、まず、伝えたいブランドイメージを掘り下げ、何が伝達手段として効果的かを検証する必要があると思います。
ブランディングとは、集客をして売上を上げるための戦略なのだから。なんとなくでうまくいくほど、世の中甘くはないと思います。
ブランドにコミットする。発信し続ける
僕はブランドを形作るための手段以上に、『考え方』が大事だと思っています。
先ほど書いたアップルのように、自社のこだわりにクレイジーなほどこだわり続けるべきだし、見えないところまでイメージ作りに手を抜かないことが肝心かな、と。
お客さんの目に触れる部分はキレイでもバックヤードが汚かったら、社員も気が抜けて仕事に“粗”が出ると思うんですよね。そしてその小さな“粗”から、ブランドにほろこびが生まれていく。
目指すブランドに徹底的にコミットすべきですし、自分自身と、そして社員とコミットし続けるためにも、一貫性を持って発信し続けることが最低限の条件です。
一貫性がない会社、一貫性がない人って、いまいち信用が置けなくありませんか? 先週決めた行動目標を次の週には何もなかったかのように覆したり、次々に流行に飛びついて、何がしたいのか分からなかったり。
もしこうした会社や人に目指すブランドがあるのだとしたら…ハッキリ言ってまったくコミットできていない。僕が以前勤めていた会社が、実はまさにそうでした。何がしたいのか、社員にも分からないから、信用ができない。
一貫性って言葉にすれば簡単ですが、これほど守ることが難しいものもないと思います。でも、お客さんに「見られている」と考えれば、いっさい手を抜けません!
目指すブランドには、徹底的にコミットしたいものです。
まとめ
ブランドの原点になるものは、誰にでも、どんな会社にもお店にも、本来あるものだと思います。ですが曖昧な概念だけにとらえどころがなく、何をどうブランディングすればいいか分からず、それゆえにコミットできないのではないでしょうか。
- ブランドとは「お客さんの頭のなかにあるイメージ」。特定の商品に紐づくものではなく、会社に関わる“すべて”から生まれるもの
- ブランド=デザインではなく、会社が持つ物語やビジョンが形成するもの。ブランド=選ばれる理由になるもの
- やることとやるべきことを線引きし、一貫性を持って戦略的にブランディングを仕掛けるのが大事
ブランドとブランディングの定義について、少しでもご理解いただけたでしょうか? 今回お伝えしたことが、あなたのビジネスを強化するヒントになればうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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