ご覧いただきありがとうございます。マーケティングコンサルタントの大鹿です。
今回は、会社の企業理念・ビジョンの作り方についてお伝えさせていただきます。
企業理念とビジョンは、たとえ会社組織でなく、小規模・またはひとりで活動する起業家にとっても作るべきもの。なぜなら、事業計画・経営計画の妥当性を照らし合わせるための骨子にもなるからです。
起業家ならぜひ読んでおきたい古典的シリーズ『ビジョナリーカンパニーZERO』より引用しながら、3ステップで企業理念を作る方法を解説します。
以前、これを題材に勉強会を開催したところ、参加された個人事業主の方「漠然としていた仕事に対する取り組み方や方向性が明確になった」とご感想をいただきました。
ぜひあなたも、今後の事業の方向性を洗練させるための道しるべとして、活用してくださいね。
企業理念がもたらすメリット
さっそくですが企業理念とビジョンの考え方をお伝えする前に、これを作ることによるメリットを、『ビジョナリーカンパニーZERO』よりご紹介します。
同書では「ビジョン」という言葉で表現し、理念はビジョンの中に含まれるという説明をしています。
ジム・コリンズ ビルラジアー著・土方奈美訳『ビジョナリーカンパニーZERO』より
- ビジョンは通常では考えられないほどの努力を引き出す
- ビジョンは戦略的判断を下すための指針になる
- 共通のビジョンは一体感やチームワークを生み出す
- ビジョンは企業がひとにぎりの中人人物に依存した状態から脱却させる
冒頭で書いたように、企業理念とビジョンは「事業計画・経営計画の妥当性を照らし合わせるための骨子」つまり戦略的判断を下すための有効な材料になります。
また、ひとり起業家であっても、文字通りたったひとりで仕事を進めるわけではないと思います。パートナーやチームと仕事を進めていくなかで、あなたの理念は仲間たちの共感・モチベーションをつかむための重要なキーワードになります。
事業に欠かせない要素であるだけに、米国の著名企業では企業理念を考えるためだけに幹部たちが集まり、何日もかけて構想を練っていったというエピソードがあるほどです。
また僕の知っている経営者のなかには、創業時から毎週、経営計画書を社員と読み上げる時間を持つほど、理念の浸透を大切にしているケースもあります。
企業理念とビジョンをつくることは売上など数字に即、また直接関係しないだけにおざなりになりがちですが、長く事業を続けていくうえで大事な取り組みになります。軽視せず、時間をかけて考えることが大事ですね。
企業理念・ビジョンを考えるための3ステップ
さて、それでは企業理念を考えるための3ステップを解説していきます。
企業理念、『ビジョナリーカンパニーZERO』でいうビジョンは、以下の3つの要素に分解されます。
①コアバリューと理念→②パーパス→③ミッション
概略として、以下の図に示してみました。まずこのようなイメージでとらえていただくと、直感的に理解できると思います。
続いて詳しく解説していきますが、
「コアバリューと理念」があなたや会社自身の行動指針。「これを外れて行動することはない」という、自分と他人、また社会に対する約束のようなものです。これがいわゆる企業理念ですね。
「パーパス」は、日本語に訳して「目的」ととらえるといいですね。これを目指して事業に取り組むものの、決して達成されることはない道しるべになるものです。
「ミッション」は、「コアバリューと理念」「パーパス」に照らし合わせて中短期で設定される目標、というところ。
抽象的なテーマになるので、これだけで理解するのはなかなか難しいはずです。のちほど具体例もご紹介しますが、あなた自身も尊敬する企業や起業家の理念の何が3つのビジョンに当たるか、自分なりの目で見てみることをオススメします。
①コアバリューと理念
- 個人が守るべき世界観、人生哲学、行動指針
- つくるものではなく心の中にあるもの
- 言葉ではなく自らの行動によって周囲に伝わるもの
コアバリューと理念のポイントはここにあるように、背伸びして新しくつくるものではないということです。
あなた自身が大切にしていること、たとえ周囲と意見が違っても「これは絶対に守られるべきだ」と宣言できる強い想いを言語化しましょう。
②パーパス
- コアバリューに従って存在する、自分(会社)の存在理由
- 常に実現に向けて努力する目標であるものの、完全に実現されることはない道標
- ずっと手に届かないキラ星を追いかけるような作業
パーパスを考えるコツは、自分または会社に対して「なぜ、それがあなたにとって重要なのか?」という問いかけを繰り返すことです。『ビジョナリー〜』では「なぜ」を5回繰り返すといい、と書かれています。
たとえば、
私は添加物に依存しない健康な食べ物を子どもたちに届けたい
- (なぜ?)→添加物は体に悪く健康を阻害するから
- (なぜそれがいけないのか?)→健康を阻害することは寿命を縮めてしまうから
- (なぜそれがいけないのか?)→子どもたちはこれからの豊かな社会を担う存在だから
- (なぜそうするべきなのか?)→地球もこの星の生き物も長く繁栄するため
- (なぜ自分はそうしたいのか?)→サステナブルな未来の実現に貢献したいから
パーパスは、「子どもたちの本物の味覚を育て、サステナブルな未来を実現すること」
※適当に考えたので良し悪しはご考慮ください(笑)。
「存在理由」とお伝えしたように、「なぜ自分はそうしたいのか?」まで掘り下げていくことがポイントになります。
③ミッション
- 決して実現されることのないパーパスと違い、ミッションは実現可能
- ミッションは単純明快で、心を熱くさせるもの
- 実現できるかできないかギリギリのレベル。かつ具体的時間軸があるとベター
先ほどの例でいうと、「サステナブルな子どもレストラン」を今後5年かけて地元に10店舗増やし、地域に活動を認知させる、というような目標がミッションになります。
ミッションは1つの山のようなものです。それを達成できれば次の10年は? 次の50年は? というふうに事業が続く限り次々と打ち立てていきます。
もちろん、コアバリューと理念およびパーパスと照らし合わせることを忘れずに。
以上の3ステップが、企業理念を作る方法になります。ご理解いただけたでしょうか?
有名企業に学ぶ理念の実例
実際にどんなものが企業理念として扱われているのかを見てみないと、イメージが湧かないと思います。そこで、『ビジョナリーカンパニーZERO』より、アメリカのスポーツ用品メーカー「ジロ・スポーツ・デザイン」の企業理念を引用してご紹介します。
コアバリューと理念
ジロの絶対譲れない基本的価値観と理念は、以下の通りだ。
最高の製品
私たちが製造する一つひとつの製品は、単なる金儲けの手段ではなく、市場に固有の価値を提供するものでなければならない。「革新的」「高品質」「圧倒的ベスト」でなければならない。
最高のカスタマーサービス
私たちのサービス基準は、製品基準と同じように厳格だ。お客様を親友のように扱わなければならない。
黄金律
取引相手には自分達がこう接してほしいと思うような態度で接する。
チームワーク
「いなくては困る人」をつくってはならない。「私」ではなく「私たち」を主語に考える。
最善の努力
誰もが引き受けた仕事で最善を尽くさなければならない。Bプラスではなく、Aを目指す。
細部へのこだわり
小さなことは重要だ。神は細部に宿る。
誠実さ
私たちは誠実だ。コミットメントを誇りに思う。私たちには一貫性があり、公平だ。
以下、それぞれ『ビジョナリーカンパニーZERO』より引用
パーパス
ジロは革新的で高品質な製品を通じて、人々により良い暮らしを届けるために存在している。
ミッション(1990年に設定されたもの)
ジロのミッションは、偉大な企業になることだ。2000年までに世界のサイクリング産業でもっとも敬愛される会社になることを目指す
決して堅苦しいものではなく、シンプルな言葉遣いで、しかし明快に書かれていることが分かると思います。
またここまで具体的に企業理念が表明されていれば、前述のように、戦略的判断の指針となり、パートナーやチームとの強い連携を引き出す原動力になることも理解できますよね。
まとめ
今回は、名著『ビジョナリーカンパニーZERO』より引用しながら、企業理念・ビジョンの作り方というテーマでお伝えしてきました。
3ステップ、と簡単に書きましたが、脳みそに汗をかきそうなほど大変な作業になることがすでにイメージできるのでは?
『ビジョナリーカンパニーZERO』に書かれていて僕も好きなエピソードなのですが、今や世界的大企業といわれる会社も、まだまだ赤子同然の創業期から企業理念作りにしっかり取り組んできたといいます。
また企業理念作りが、長く続く会社とそうでない会社を分ける決定的な差になるといいます。
僕も、そしてもしかしたらあなたも、まだまだビジネスではひよっこかもしれませんが、長く人に、社会に愛される事業をするために、明確な理念とビジョンを打ち立てていきたいものですね。
本記事のまとめ
- 企業理念とビジョンは戦略的判断を下し、仲間の力を引き出すための材料になる
- コアバリューと理念→パーパス→ミッションの順番で企業理念を作ろう
- 赤子同然の創業期からでも、臆さず企業理念を打ち立てるべき
今後、あなたの事業を大きく、洗練されたものにするためのヒントになればうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
追伸)
僕・大鹿はコピーライターとしても活動しております。「企業理念を作りたいけれど、具体的で明確なキーワードが浮かばない…」とお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。理念を言語化するお手伝いもできます。
お問い合わせ先 udon@shikashika1969.com
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