元編集者として800件以上を取材。質問力で実店舗・中小企業様を選ばれる存在に導く、Web販促コンサルタントの大鹿です。
「足りないものはない」といわれる世の中、「いいか? 悪いか?」「使いやすいか? 使いやすくないか?」といった平面的な機能比較だけでは生き残れなくなってきたと思います。
コピーライティングの世界でも【人は感情でものを買い理屈で正当化する】というように「先立つのは感情」だと昔からいわれています。特にいまは資本のある大手企業すら「物語性」のあるCMを流し、人の感情に訴えかけるようなプロモーションをしていますよね。
購買の決め手が機能性以上に感情的な価値、それら引っくるめて【ブランド力】にシフトしていくように感じますし、それがないと戦えない! と、僕も営業マンをしていたのでヒシヒシと感じたことです。
今回は僕の実体験で、「ブランド力がなくて戦えなかった」事例についてお話しさせていただくので、反面教師にしていただけると幸いです。
ぶっちゃけ機能性はどっこいどっこい
のべ6年弱、営業マンをしていました。中小の菓子問屋で働いていたのですが、会社の商品を「売ってこい。満を持して作った新商品なんだから」と、ノルマを課せられるわけです。
でも…どうでしょう、肌感覚ですが10品顧客=小売店に提案して半分取り扱えてもらえて、1品当たるかどうか? くらいの打率だったように思います。
他社より「内容量が10g多い」(その代わり味の質はよくない)とか、「中国からの輸入品だから安い」(ただしやはり味の質はよくない)といったものが多かったです。それで、他社の商品と自社の商品を一緒に小売店のバイヤーへ持って行って、機能比較するわけです。
今だから言えること。あえてカッコ書きにしましたが、容量だの価格だのといった数値的優位性を重視するあまり、決して味はよくないんです。食べ物の本質は、美味しいかどうかなのに。
僕はずっとコンビニを担当していました。
一時期はそういった数値的優位性が求められることもありましたが、次第に味という本質の部分であったり、「北海道産」のようなイメージ的・物語付加価値に、小売店もユーザーも重きを置いているのを感じていました。会社に意見をしたことも星の数ほど。
結局、機能的・比較的優位性は消費者にはまったく関係がないことなので、10品中1個当たるか当たらないか、という結果になってしまうんですね。競合他社の商品も自社の商品も、「10g多いなんて誰が見るんだ?」と客観的に思っていましたし、ぶっちゃけどっこいどっこいです。
こういう競争はイタチごっこなので、2ヶ月後には20g多い商品が出たりします。僕のいた会社もそういう戦略をやっていましたが、目的が消費者のためではなく競合に勝つことなので、無理をするために利幅が低い。
たとえ機能比較で売っても、利幅が低ければ責められます。まさに、負のスパイラル。
会社の内側だけで、思い込みで商品を作ると…
あとでも書くのですが、会社には立派な企業理念、感情に訴えかけるような物語が本来あったんです。にもかかわらず、「こういう商品はどこにもない」「こういう機能はどこにもない」などと、やはり競合や市場だけを見て、商品開発をします。
これまた今だからいえますが、「こういう商品はどこにもない」のは分かったけど、「なぜなかったのか?」考えているのか、正直はなはだ疑問でした。技術的にできないことができるようになったためなのか? 失敗例があってないのか?
会社の内側だけで「ああだ、こうだ」「これは絶対に売れる!」と思い込みだけでもの作りをしていて、肝心の消費者を見ていなかったんですね。いまはテスト品をクラウドソーシングして消費者に感想をもらうこともできます。こうしたことも案として提案したことはあったのですが、ポカンとしていました。
変にプロ意識で凝り固まっていたんだと振り返ります。消費者を「アッ」と驚かせるものを作るんだから、いま消費者に意見を聞いても仕方がない、というような。
そうしたもの作りの結果が、1/10の打率です。博打、でしたね。。
ブランドの種はどんな会社にもある。なのに…
お菓子の問屋だったので、北海道から沖縄まで、中小のお菓子メーカーの商品を何千と取り扱っていました。そうした中小メーカーに会社を大きくしてもらったから、彼らに恩返しがしたい。お菓子という文化を、未来に残したい。
そうした素晴らしい、創業時からの企業理念でありブランドの種があったんです。(「あった」と書いたのは、会社が吸収合併されて理念が形骸化されてしまったから…)
そして何を隠そう、顧客である小売店担当者からも、会社の企業理念を通して発信される『お菓子という文化』を、自分のチェーンで表現して欲しいという意見がありました。それにも関わらず、当の会社は比較・優位性ばかり見ていたように思います。
実際、僕が取り扱っていたなかでも、どんなに小さなお菓子メーカーにもブランドを形作る物語はありました。営業マンもいないような小さなお菓子メーカーの代わりにブランドを発信するのが、問屋の仕事だと思っていましたし、僕個人はなるべく心がけていました。
しかしやはり、会社の軸足がそうではなく、「比較して比較して、最後には安売りしてくれる問屋」というイメージが醸成されていて。一部、本当の意味で評価してくれる先述のような顧客からは「安売りなんてしちゃダメだよ」と、ありがたい意見をいただくこともありました。
このもどかしさたるや、なかったです。
まとめ
今回は僕の苦い経験をお伝えさせていただきました。
売った買った。高い安い。どっちが優れていてどっちが劣っている。そんなベクトルだけでものを売るのは売り手としても気分がよくないですし、僕がいたような中小企業がそんなことを続けていると、体力を削られていくだけだと思います。
ブランド力は企業のビジョンから醸成されるものですし、曲がりなりにも続いている会社なら、ブランドになりうる種はきっとあるはずです。
もしあなたの会社が、今回僕が書いたような状況に陥っていたとしたら…企業のあり方を考えるきっかけになるとうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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