地域活性化。地方創生。いろんな呼び方がありますが、このようなたいそうな言葉のために、地元を元気にすることが選ばれた人しかできないように思われがちです。
でも、本当にそうでしょうか?
地元の外から人を連れてきて、大々的な観光施策や経済政策をすることが、果たして本当の地域活性化なのでしょうか?
地元の主役は地元の人です。その街の人が活躍できる舞台が増えることが、本当の意味での地域活性化だと思います。
少しうがった見方かもしれませんが、地元人材の地産地消と言うテーマで、地域活性化について考えていきます。
本当の地域活性化って?
地元で暮らしてその街のために何かをしたいという人は、潜在的にかなり多いです。よく聞く話です。
また、僕がまさにそうなのですが、都会の暮らしをリセットして、地元に帰って地元のために何かをしたいと考える人も多いようです。
しかし、地元のために何かをしようと思った時にジレンマを抱えることがあります。もっと大きな事がしたいのにできない。人がついてこない。行政が動いてくれない、といったことです。
当たり前と言えば当たり前なのです。ネームバリューのない個人には信用がないから。いくら「地元のために」と正しいことを大きな声で叫んでも、誰もついてきてくれないのが現実です。
これは、誰かに問題がある・ないではなく、メディアで報道されるような事例が、地域活性化の正解であるかのように思わされていることが原因だと感じます。たいそうなまちづくりをしたり、何千何万人と集めるようなイベントをしたり。
でも、1人でも誰かが街のために何かをしているのなら、それはもう立派な地域活性化だと思いませんか?
メディアに取り上げられるのは手段であって、目的ではないです。僕たちみんなが普段やっていることが、地に足のついた本当の地域活性化なのではないでしょうか。
地元の人とどんどんアライアンスを組む
以前、株式会社クリエイターズマッチと言う企業と、セミナーでお仕事をさせていただいたことがあります。彼らがスローガンにしていた言葉がとても印象に残っているのでご紹介します。
「クリエイターの地産地消」
「地元を誰かにまかせない」
クリエイターズマッチさんは文字通り、地域の仕事を地域の人材で担うための支援をしています。そして彼らの考え方は、クリエイターに限らず、「人材の地産地消」と言う点で大事な考え方だと思っています。
外から人を連れてきたり、都会の副業人材を活用したりといった流れも、経済の活性と話題性と言う面では悪くありません。
でも、それらを担える人材が地元にいるのに活用しないと言うのは、地域全体の活性化からするとミスマッチな気がします。
が、他人のことをああだこうだといっても仕方がありませんね。かえって地に足のついた地元民だからこそできる地域活性化が、人材の地産地消ではないでしょうか。
例えばチラシをつくりたいなら、ネットでクラウドソーシングするのも手軽で良いですが、地元のデザイナーさんにお願いしてみるとか。フリーで活動しているクリエイターって地方にも結構いますよ。
そういった人はまた、普段クラウドソーシングで仕事をしていたりしますが、地元のために仕事がしたいと思っている人が本当に多いです。
何気なく地元外の人にお願いしていた仕事を、地元の中の人にお願いすること。これだけで人材の地産地消になりますよね。
もちろんビジネスですから、シビアに見るところは見るべきです。ただ、長い目で見て地産地消になり得る事なら、一気にでなくても良い。ゆるやかに地元消費の割合を増やしていくのもやり方です。
地域は狭いものです。このように地元人材のアライアンスを増やしていくことで、人のつながりも数珠つなぎ的に増えていきます。そしてまた、新しい仕事につながっていって。
こうしたこともミクロながら立派な地域活性化だと思います。そもそも、誰かに話題を認められなければ成り立たないものなんて、地域活性化でも何でもありません。ただの一過性のニュースです。
誰もがミクロな地産地消を意識するようになれば、結果としてマクロで継続的な地域活性化になっていくのではないでしょうか。
コラボレーションで地産地消を発展させる
人材の地産地消について、アライアンス(連携)から少し発展させてみます。お互いがお互いの価値を高め合うコラボレーションのあり方について考えてみましょう。
これは、中小企業支援の全国ネットワーク・ビズモデルで活躍される、瀬沼健太郎氏(らづBizセンター長)からお聞きしたコラボレーションの公式です。
商品力×方向性×価値UP(が満たされているかどうか)
大前提として、コラボレーションするお互いの商品力が高いことが条件。そして、お互いのゴールがが同じ方向を向いている事。さらに、どちらか一方の価値が高まるのではなく、相乗効果が期待できること。
方向性というキーワードがわかりづらいかもしれません。例を出してみます。
例えば、同じ地元産のフルーツ2つを使ってパフェにしたら、これは同じ方向性を持ったコラボです。なぜなら、どちらもパフェと言うコンテンツを通して、地元産フルーツの魅力を知ってもらえることになるから。「酸っぱ甘い」みたいな新しい味を生み出せば、価値と価値のかけ算にもなりますよね。
しかし、例えば同じ地元で革製品を手がけているメーカーが、もっと認知を広げるために、地域で有名なりんごのマークをバックに刺繍したとします。
これは一瞬、話題になるかもしれませんがロングヒットは難しいはずです。りんご農家さんにとっては、あまりうまみのあるコラボではありませんね。お互いの方向性も価値のかけ算もズレているからです。また地産である必要性もあまりありません。
つまるところ、「地元の活性化だ」「社会貢献だ」という言葉が方便だけだとこのような失敗例になりかねないです。
想いの方向性は同じでも、「こっちはりんご農家のネームバリューが欲しい」「こっちはライセンス契約でお小遣いが入ってくればいいな」といったことでは結果としてお互いの価値は高まりません。マイナスブランディングにさえなりかねない。
回りくどかったかもしれませんが何が言いたいのかというと、コラボレーションが「お互いを伸ばすための地消」にならないと本末転倒だということです。逆に成立すればこれほど強力なものはないと思います。
「こんな人とコラボしたらお互いの価値が高まらないかな?」といったアイデアはありませんか? そしてそれは「商品力×方向性×価値UP」の公式を満たしますか?
考えてみるとワクワクしますね。僕も改めて考えてみたいと思います。
地元に新しい習慣をつくる
僕が以前いた食品業界にはMDカレンダーというものがありました。スーパーなどの小売店は1年間を48週に分け、毎週何らかの行事を販促として打ち、行事に見合った商品を展開します。
すると、ただ棚に並べていただけの食べ物に、必要性や買うタイミングが生まれます。年末になれば鏡餅が売れるし、ハロウィンになればお菓子の詰め合わせが売れます。
これはつまり、消費者に「習慣」を作っていると言うことに他なりません。日本のバレンタインは、お菓子メーカーが作ったイベントだと言うことをご存知でしたか? 習慣は時間をかけて作ることができるのです。
地域活性化においても同じです。何をやるにしても最初は時間がかかると思います。半年〜1年のスパンではなく数年かかって普通。根強く、新しい習慣を作っていくきませんか?
地元の外から人を連れてくると言う流れはある意味トレンドです。今後続くかもしれないし、続かないかもしれない。いずれにしても、地域のイチ個人である僕たちに動かせるものではありません。
でも、地元の主役である僕たちが行う事は、僕たちがやめない限り継続できます。地元を誰かに任せず、小さくても、行政に認められなくても、関わる人をハッピーにするために続ける活動には絶対に価値があります。
まとめ
個人的にずっと違和感を感じていたことがあります。
「確かに都会は進んでいるけれど、地方には地方にしかない魅力がある」という意味の言葉です。
とても耳障りがいいです。
でも「地方にしかない魅力って何?」と大真面目に聞くと、誰も答えられないんですよね。自然がある、人が暖かいといったどこでも言えそうな事は出てきます。でもそれがどのように地域の活性化につながっているのか? と言うと、多くの人は言語化することができません。
厳しい見方かもしれませんが、結局、地域活性化は他人事であって、誰かがやってくれるものと思っているからかもしれない。自分にはできないと思い込んでいるのかもしれない。
でも、そんな事はありません!
繰り返しますが、地元の主役は地元で暮らす人たちなのです。他人が目立つ活動しているとか、行政から予算を引っ張って大きなことをしているとか、そんなことは関係ないです。
僕たち自身に何ができるか? それが大事ですね。そして地に足のついた本当の地域活性化のヒントが、人材の地産地消にあるのだと思います。
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