ご覧いただきありがとうございます。マーケティングコンサルタントの大鹿です。
新規開業を控えると、名刺やチラシ、会社案内といった各種紙の印刷物をつくることになると思います。そこで、多くの人がプロのデザイナーや地元の印刷会社などにデザインを依頼することになるわけですが、注意しておきたいことがあります。
それは、デザインを依頼する際には頼む方にも最低限の知識が必要だということ。
なぜならこれも多くの人が、デザインを人に依頼した経験をさほど持っていないから。
知識もないまま「任せておくからあとは頼むね」なんて意図や目的もろくに伝えずに制作を丸投げしてしまうと、「全然イメージしていたものと違った!」ということになりかねません。
そこで今回は、元編集者で現広告屋でもある僕が、販促物をデザイン依頼する際に知っておくべきポイントをお伝えします。
なお、新規開業時に「これだけは用意しておきたい」という印刷物を下記の記事で解説しています。ぜひ、併せてお読みください。
デザイナーに必ず伝える・交渉するべき6つのポイント
まずは、デザイナーに伝えるべきことと交渉すべきことをお伝えします。仕事を受ける側としても発注する側としてもいくつものデザインに関わってきて、「これはマスト」といえる項目です。
用途・目的
デザインというと「どんなトーンにするか?」「どんな配色にするか?」などにばかり目が行きがちですが、実はこれは後の話。大事なのは、その制作物をどんな目的でつくるか? です。
チラシをイメージすれば分かりやすいですが、開業や新規オープンを伝えるものなのか? 新商品・サービスを告知するものなのか? そもそもどんな人をターゲットにするのか? など目的によってデザインのアプローチはまったくと言っていいほど変わります。
そして悪いことに、こうした用途・目的をデザイナー自身も確認しようとしない場合があります。それこそ、どんなトーンでどんな配色で…という「形の部分」から入ろうとします。
個人的には、上手い下手・質が高い低いではなくこのように「形から入る」デザイナーは避けた方がいいと思います。
いずれにせよ、あなた自身が「どんな目的で使う販促物なのか」をしっかりと定め、最初にデザイナーに伝えるようにしましょう。
似せたいデザイン・トーン
目的のすり合わせができたところで、ようやくトーンや配色といったデザインの方向性の話に入ります。
このとき注意したいのは、よほどの経験がない限り言葉だけでイメージを伝え、それを相手に理解してもらうのは困難だということです。
ですから、似せたいデザイン・トーンの作品があればそれをデザイナーに渡すようにしましょう。そのほうが手間なく・ズレなくイメージの共有ができます。
幸い、今は「サロン チラシ」「整体院 名刺」などとGoogleで画像検索をすればいくつもサンプルが表示されます。また、書店に行けば用途別にまとめられたデザインのサンプル本も売られています。
「お任せ」ではなく、あなた自身がある程度イメージを持って主体的に伝えるようにしたいものです。
美容院で「こういう髪型にしたい」とオーダーするのと同じです。あなたのオーダーを形にするのがデザイナーの仕事、くらいに思っておくといいですね。
使って欲しい素材
あなたの顔写真や商品の写真、あるいはロゴなど、使って欲しい素材がある場合は事前に伝えておきましょう。
このとき、おそらく素材の「解像度」(画素の密度)について聞かれると思います。解像度が十分あれば問題ないですが、不十分だと画像が粗く表示されてしまうことになります。
デザイナーの指示に従って、印刷に必要なだけの解像度が素材にあるかどうか、必ず確認するようにしてください。
ちなみに、素材の解像度についてヒアリングするのはデザイナー側のマナーです。中には「お客が出してきた素材だから責任を持たない」というデザイナーもいます。
もし聞かれなければ、必ずあなたの方からうかがうようにしましょう。
納品データの形式
デザイナーがそのまま印刷まで行ってくれる場合は別として、データを印刷会社に入稿したり、ネット印刷に出したりする場合は、納品データの形式を確認する必要があります。
- イラストレーターなのか「.ai」、PDFなのか「.pdf」、あるいは画像データなのか「.jpeg」「.png」など
- 色を表現するカラーモードはCMYKなのか、RGBなのか(印刷媒体の場合はおおむねCMYKだと思います)
データを入稿する先から指示が出ていたり仕様書があったりするはずなので、分からない場合は上記のような内容をあらかじめデザイナーに伝えましょう。
納期
販促物の目的とデザインの方向性、データ形式が決まったら、デザイナーのほうもだいたい、どれくらい制作日数がかかるかをはじき出せるようになります。
そこで、納期の交渉です。
制作するものにもよるので一概にどれくらい日数がかかるとはいえませんが、おおむねどれだけ最短でも最初のデザインアップまで2〜3日はかかると思います。会社案内などページものになれば、それだけ制作に要する日数がかかってきます。
特急料金などで仕上げてくれる場合もありますが、まずはあなた自身がいつデータを納品して欲しいか? 印刷を別で行うのであれば印刷の所要日数がどれくらいなのか? を逆算して依頼する必要があります。
少なく見積もっても、必要になる3週間〜1ヶ月前には依頼するくらい余裕を持っておいた方がいいですね。
料金
最後に、デザイナー側から料金が提示されることになります。
おそらく多くの人がこうした「デザイン」というものの相場を知らないはずです。最近は比較的透明性が出たように感じますが、それでも「チラシ1枚ならこれ」のように決められた相場がないのが現実です。
相見積を取っても、違って当たり前な世界であるともいえます。
デザインを依頼した経験がない人にとって難しいのは、安ければいいわけでもなく(質がついてこない)、高すぎると手を出しづらいというところ。相手に伝えた依頼内容に対して、料金が適切なのか判断のしようがないということもあると思います。
なのでこれは“決め”の問題なのですが、安さを求めるのか妥協せず質を求めるのかをあなた自身が考えておくことが大切です。出せる予算で決める形でもいいです。
何も決めずに流されてしまうと、安いけれど期待を下回る質だった、あるいはその逆もしかり、ということになってしまうので注意してください。それでは後の祭りです。
納得できれば、実際に発注に進みます。
デザイナーと打ち合わせする前にチェックすべき2つのポイント
ここまではデザイナーと実際に打ち合わせをしてすり合わせるべき項目でしたが、その前にできれば確認しておきたいことがあります。大事な2点をお伝えします。
過去のデザイン実績・作品
先ほど似せたいデザイン・トーンがあればサンプルを渡す、というお話をしましたが、デザイナーの実績を見て自分のイメージに近いものがあればそれでOKです。
そうではなくても、できるだけデザイナーの過去の作品はチェックした方がいいです。ホームページなどでオープンになっていなければ、個別に請求してもいいと思います。
というのも、デザイナーも仕事ですから基本的に「どんなデザインでもできます」といいますが、その実、得意不得意はあります。あるジャンルは経験があって強いけれどその他は弱い…といったこともあります。
また、何をつくるにしても抜け切らない、デザイナーの“手グセ”のようなものもあります。たとえば必要以上に色数を多く使ってしまう、良くも悪くも特定のフォントを好んで使ってしまう、など。
デザインを依頼した経験が少ない場合は、直感で構いません。仕上がりの質を問わない場合ならまだしも、「これは合わない」と思ったら依頼先を切り替える方が無難です。
提案数と修正回数
オプション扱いで料金が加算されるかもしれませんが、複数案を提案してくれるかどうか。それと、修正に何回まで応じてくれるかどうか。これも事前に確認した方がいいですね。
あなたがイメージしたものをほぼそのまま形にしてくれればいい、というのであれば1案だけで構いません。しかし複数案を見比べてみたいという場合、おおむねバリエーション提案はしてくれます。
必ずチェックしておきたいのは修正回数です。システマチックに稼働している会社ほど、修正は「1回のみ」「2回のみ」といった制限が設けられている場合が多いです。そして規定回数を超えると、料金が加算されることになります。
少し脇道に逸れますが、よくないのは、目的やデザインのトーンがちゃんとすり合わせないまままったくイメージと違うものが上がってきて、修正の方向性すらままならない場合です。これはあなたにとっても、デザイナーにとっても避けたい展開ですよね。
修正回数を減らすためにも、やはり事前要件の共有はマストです。
まとめ
今回は新規開業にかかわる販促物をつくる場合の、デザイナーへの依頼の仕方について解説させていただきました。
冒頭でもお伝えした通り、「あとはお任せ」という姿勢ではなく依頼者にも最低限の知識は必要です。そして、デザイナーはイメージを形にしてくれる人であり、あくまであなた自身が主体的でなければならないこともお分かりいただけたと思います。
せっかくの新規開業、予算の問題はありますが名刺もチラシもなるべく自分のイメージ通りのものをつくって、気持ちよく仕事をスタートしたいですよね。
デザイナーに必ず伝える・交渉するべきポイント
- 用途・目的
- 似せたいデザイン・トーン
- 使って欲しい素材の共有
- 納品データ形式
- 納期
- 料金
デザイナーと打ち合わせする前にチェックすべきポイント
- 過去のデザイン実績・作品
- 提案数と修正回数
上記の項目をチェックしながら、デザイナーと有意義に話を進めてくださいね。
なお、開業時につくる販促物は集客はもちろんあなた自身のブランディングに大きく関わるものです。どういう方向性でデザインを作ればいいのか分からないということでしたら、お気軽に無料相談をご利用ください。
紙媒体制作キャリア8年の僕が、ご一緒に考えさせていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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