元編集者として800件以上を取材。質問力で実店舗・中小企業様を選ばれる存在に導く、Web販促コンサルタントの大鹿です。
ビジネスを軌道に乗せるには、絶え間ないリサーチが欠かせないといわれます。市場データをマクロ的に読み解くマーケットリサーチも大事だし、ユーザー、つまり「人」の感情にフォーカスするミクロのリサーチも必要です。
今回、後者をインタビューリサーチと呼び、そのコツについてお伝えしていきたいと思います。長年インタビュアーをしてきた僕の得意分野でもあるのですが、Why・Who・What・Howの【3W1H】を駆使することがミソです。
お読みいただければすぐにでも使える内容なので、ぜひ最後までお楽しみくださいね。
核心に迫るWhy(なぜ?)
なぜインタビューリサーチのキモがWhy・Who・What・Howの4つなのかというと、これらが人の価値基準・行動基準を浮き彫りにする質問だからです。
特に、インタビュー=問うことである以上、Why(なぜ?)は必ず相手に聞くことになりますよね。「なぜ、それを始めたのか?」「なんで、好きになったのか?」といったこと。
本記事執筆時点で昨日、まさにクライアントさんに、ご自身の事業のきっかけを改めてお聞きしました。Why(なぜ?)をどんどん繰り返していけば、「なぜ、事業を始めたのか?」という「核心」に迫ることができます。
試しにあなたも、人に対して5回、「なぜ、〜をしたのか?」「好きになったのか?」あるいは「嫌いなのか?」といった質問を繰り返してみてください。自分に対してでもOKです。
「自分って、こう思っていたんだ」ということが浮かび上がってくると思います。
または、昨日まさにあったのですが、本人が「こんなこと大事なことじゃないと思って、言わなかった」ということも、Why(なぜ?)を繰り返すことで浮上してきます。
当人にとっての当たり前は決して他人にとっての当たり前ではないのですが、えてして人は、自分では自分が持っているものの価値に気づかないものです。
たとえば、前述のクライアントさんは服飾作家なのですが、
「自分たちが子どもの頃は、母親が生地から服を縫ってくれるのが当たり前だった。そんな過去があったから、還暦を過ぎて自分のやりたいことをやろうと決めたとき、服飾の作家を選んだのかもしれない」
と、語っています。
僕は現在35ですが母親が服を縫ってくれたことなんかないし、いいところ従兄弟のお下がりでした。おそらく友人も、兄弟のお下がりとか、似たようなものだったんじゃないかと思います。
僕ら世代にとっては、母親が服を縫ってくれるなんて、まったく当たり前ではないわけです。
だから、服飾作家になったエピソードは、クライアントさんのブランドストーリーを語るうえで軸になる要素だし、「古きを知り新しきを知る」というような、目新しさをもたらすことになると感じました。
そうした意味では、Why(なぜ?)とは、相手が持っていてなおかつ内に秘めている想いを、宝探しのように掘り当てていく活動に似ています。掘れば掘るほど、金脈=核心に近づいてくるイメージ。
相手の核心が分かるということは、その人が本当に達成したいこと、欲していること、得たいものが分かるということです。たとえば、男性がダイエットを頑張っていることの核心には「女性にモテたい」という核心があることが多いですよね。
であれば、痩せることも大事だけど、身だしなみや清潔感まで含めて短期間でトータルに改善するサービスこそが、相手が本当に求めていることかもしれない。
インタビューリサーチにおいてはこのように、Why(なぜ?)を軸に質問を組み立てていくと、ビジネスチャンスに直結することが多いようです。
価値観が現れるWho(どんな人が)
Whyと似てはいるのですが、Who(どんな人が)による質問は、より人の「価値観」に迫れるものだと思います。
人間は人間との関わり合いのなかで成長し、人格が形成されていきますよね。人格とは考え方であり価値観ですから、「どんな人と関わり合い、どう感じてきたのか?」をインタビューしていくことで、相手の人となりが分かってきます。
たとえば、
- これまで、どんな人との出会いがあったのか?
- どんな人を尊敬しているのか?
- どんな人が好きで、どんな人が嫌いなのか?
といったことを相手に聞けば、それだけで相手の価値基準というものが見えてきます。
特に、あえて「どんな人が嫌いか?」という質問は、してみた方がいいかも。「嫌い」は、より本音にフォーカスしたものになるからです。
価値観とは心の表情のようなもので、これを先ほどの「核心」とともに浮き彫りにすることで、人を理解し、その感情をとらえた商品・サービスが届けられるようになります。
ありていにいえば、「こんなものが欲しかった」「なぜ、自分が欲しいものをあなたは分かるの?」と思ってもらえるような、相手の心を揺さぶるもの。
『人は感情でものを買い、そのあと、理屈で正当化する』といわれます。まず感情ありきですから、価値観というものは、いくら知っても知りすぎることはないほど、ビジネスでは欠かせないポイントになります。
ターゲット像を明確にするためのHow(どうやって)・What(何をなんのために)
Why(なぜ?)とWho(どんな人が)に加えて、How(どうやって)・What(何をなんのために)という要素をインタビュー項目に加えていくと、よりあなたが商品を届けるべき相手が明確になります。
今回テーマにしているリサーチはマーケティングの一要素ですが、マーケティングとはピーター・ドラッカーいわく、『売り込まなくても、顧客の方から商品を買い求めにくる状態を作ること』といわれています。
もちろんそのためには商品・サービスの届ける手法(ライティングなど)も必要ですが、何よりも大切なのは、ターゲットを理解し、「あなたの未来をよくするものは、ここにあるよ」という表明をすること。
ターゲットを理解するためにも、【3W1H】の総力戦で、その人物像をくっきり明確にしていくといいですね。
WhenとWhereは必然的についてくる
ちなみに、なぜ【5W1H】ではなく【3W1H】なのかというと、WhenとWhereはインタビューのなかで必然的に生まれる質問だからです。
実際、5W1Hだとインタビュー項目が複雑化して聞き手自身が使いにくいということもあるので、3W1Hの4つを、確実に・欠かさずヒアリングできるよう意識してみてください。
相手を肯定する。聞き手自己開示する
普段の会話でも同じだと思うのですが、「人は相手に理解された」と感じると、心を開くものです。
わざとらしくする必要はありませんが、相手を肯定したりポテンシャルを引き出したりする質問があると、「理解されている」と感じるものです。
おそらくあなた自身、人から自分のポテンシャルを褒められると、うれしくなって「もっと話をしよう」と思えるはず。
また、相手を理解するためには相手との【共通点を作る】ことがキモになるので、インタビュー聞き手であるあなた自身を自己開示することで、相手と自分の間にかけ橋を作ることができます。
もちろん自己満足な内容ではなく、話題や相手の人となりに応じた開示が大切になってきます。
ともかく、ここまで何度か書いてきたように「人は理解されたい生き物」です。「汝隣人を愛せよ」などといわれる通り、「自分が聞かれてうれしいことを相手にする」という原点が大事ですね。
まとめ
よくマーケティング=データ分析(リサーチ)だととらえている人が多いですが、データ分析はあくまでマーケティングの一部であり、その本質は先にも書いた『売り込まなくても、顧客の方から商品を買い求めにくる状態を作ること』だと僕は考えています。
ターゲットとなる人物像を理解し、悩み・不満・欲しているもの・目指している未来を理解してはじめて『顧客の方から商品を買い求めにくる状態』に近づけると思うので、インタビューリサーチという活動は欠かせないと思います。
ぜひ、今回お伝えした内容を今後のリサーチ活動に役立て、ビジネスを軌道に乗せる一助にしていただければありがたいです。
今回のまとめ
顧客を理解し感情にフォーカスするために使えるインタビューリサーチのツールが、【3W1H】
Why(なぜ?)で核心に迫り、Who(どんな人が)で価値観を浮き彫りにし、How(どうやって)とWhat(何をなんのために)でターゲット像を明確にする
自分がされて嬉しいように相手にインタビューする。相手を肯定し、聞き手も自己開示をすること
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